門前払い

独学で勉強してきた英語とロシア語で、入学させてほしいと頼んだが、全然相手にしてもらえない。それこそ門前払いという感じで、これには大きなショックを受けた。何しろ日本にいるときに、建築雑誌のソ連特集記事の中で、モスクワ大学をはじめとするソ連の大学では、英語が通じ、一芸でも秀でた才能があれば、喜んで入学させ、引き上げてくれるというようなことを読んで、真に受けていたのである。だから、ロシア語なんか話せなくたって、多少の英語ができれば、デザイン画のテストかなんかで入学させてもらえて当たり前ぐらいに思っていた。私も、日本で建築学科の学生だったわけだし、ほんの少しだが実践の経験もあるではないか。ところが、思いもかけない冷たさである。その後も何度か足を運んだが、結果はやはり同じだった。ある日の朝、気落ちした私は、宿泊先のモスクワホテルのラウンジでチャイを飲みながら、今後の対策を考えていた。いったいどうすればいいのか、このまま日本に帰っても、もう大学に籍はないだろう。だいいち、またシベリア鉄道で来た道を帰るのだろうか?う-ん、どうしたものか。すると、懐かしい日本語で「おまえ、日本人か?こんなとこで何してる?親と一緒か?」と声をかけてくる人がいた。いきなりの「おまえ」呼ばわり、しかも子供扱いするとは何だと、少し腹も立ったが、連日の門前払いで心細くなっていたのだろう。

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