旧弊な形式だけの日本家屋はつくりたくない

東京からやって来た、どこの馬の骨ともわからぬ若造が、いったいどんな家を建てようとしているのか。もちろん口に出して言うわけではないが、心の中ではそう思っているのに違いない。勇気を持って、若い私たちに設計を依頼してくれた小手川氏に、何としても満足してもらえる家を建てたい。私は、強くそう願った。町を見下ろせば、どこまでも続く蔓の波、漆喰壁の白い色は目にも優しく、地場産の灰石と呼ばれる凝灰岩の石積みによって堅牢に守られた家々が並んでいた。この美しい町の景観を壊すわけにはいかない。かといって、旧弊な形式だけの日本家屋はつくりたくない。最新の建築手法とデザインを盛り込みながらも、町並みにあった家をつくらなければならないのである。建築を学び始めてまだ間もなかった私は、デザインとは何なのかを、初な五感と頭をフル稼働させて考えさせられた。臼杵らしい自然の素材を、外観だけでなく家の中にも使ってみたらいいんじゃないか。そうだ、玄関ホールには、灰石を積み上げて、その周りになじみのよい杉板をめぐらそう。夏場の涼を取るためには、居間の足元の窓に面するように池をつくろう。これは天然のエアコンとなる。リビングルームには、人の集まる囲炉裏のような暖炉を。アイデアは次々に浮かび、そのどれもが、臼杵の町と、まだ見ぬ建物に吸いつくようにマッチしていると感じられた。あのときの、沸き立つような興奮を、私は三十五年以上経ったいまも忘れることができない。

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